若い頃は、体力もあり夜なべや、徹夜をしてでも一気に描き上げていました。
ところが、きみまろ ではありませんが、あれからニ十年 目はかすみ、体力は衰え
集中する時間がだんだん短くなってくるのです。一時間描いたらニ十分は休憩を取らないと
目がもたないのです。そして若い頃は勢いに任せて、かなり大胆な構図で大きく
描いていました。
それが歳を重ねるごとに、繊細で細かいものが好きになり、色々なことに気付く様になり
ちょっとした流れや形に、こだわる様になってきました。それにこのかすみ目です。
時間がかかってしかたありません。
歳をとる と言うことは、こういうことなのですね。
でも、この現実に逆らうことはできません。それが今の私なのですから。
一晩徹夜をすれば、ニ・三日は仕事にならないし、毎日パックをしても 目の下のたるみや
小じわは消えません。そんな事が情けないわけでもなく、悔しいわけでもありません。
ただ、新しいアイディアや柄が思い着かなくなり、スランプから抜け出せなくなる事が
一番悲しく、老いを感じる時なのです。でも、まだ大丈夫、昨年の大きなスランプを
切り抜ける事が出来たのですから。
勿論 それはレターを読んで励まして下さった、皆様のお陰です。そして、若い頃には、
考えも着かなかった事に気づく時、長年仕事を続けて来れた事に感謝しているのです。
こんな調子ですが、本年も宜しくお願い致します。
昨年最後のレターで紹介した、合同展出品作品が完成しました。
例の訪問着でミモザの柄です。タイトルは『浅間の雲に咲く』としました。
パアーと広げた瞬間「よし!」と思いました。結構この瞬間が大切なのです。スタッフ達も
「うわあー すごい、こういう感じは初めてですね。これが、浅間の雲ですか?」
「そう、これが浅間の雲よ」そして拍手が起こりました。
柄は全体にあるのですが、モノトーンタッチのシンプルな彩色で、ポイントの一部に
ミモザのイエローを入れました。
地色は、白地に薄い白茶をかけ、白場を生かしながら、紫 グレー 草色の ぼかしを
不特定にいれ、何とも不思議な感じです。でも、すごくやさしい雰囲気です。
浅間山が噴火する前の、静かで穏やかな雲のイメージを表現しました。
そんな浅間山を見たからです。もう随分前になりますが、とても美しい風景でした。
ところが、問屋の担当者は「先生の作品だけ見ていると、すごく良いのですが、
他の先生の作品と一緒に展示すると少し弱いかもしれないですね。みんな、すごい奇抜な色で
大胆な色分けとかしていますよ。」と言うのです。そして、すごいインパクトのあるもの
ばかりなので、そんな中だと目立たないかもしれないと言うのです。
私は「それより、着たらどうか見てみようよ。」と静香さんに試着してもらいました。
「すごく上品でいいですね。」と問屋 「いいでしょう? 綺麗だと思いません?」と言うと
「確かに着るといい感じです。でも、買い付けに来るのはプロで素人さんじゃあないです
からね。」なんて言って帰っていきました。買い付けに来るのはプロ? でも素人さんに
買ってもらうんでしょ、着るのは素人の女性ですよ。まぁいいか?
女性の気持ちが解らない様なバカなプロには買って頂かなくても結構だわ!と思いました。
私は、長年着物づくりをしてきました。でも、着物は着るものだということを意識せずに
つくったことはありません。勿論、展示した時の目映えも大切です。
見て美しくなければ、作品としての価値はありません。だからと言って、奇抜なものが
良いとは思いません。目立つものが良いとも思いません。着物は目立ってはいけないのです。
着る人を引き立たせるものだと思うのです。
あくまで着物は脇役です。着る人が主役なのです。
なのに、作家の個性を思いっきり強く出せば、例え女優さんでもまけてしまい着物ばかりが
目立ってしまいます。どこにもない個性的なものをつくろうと、作家なら誰でも考えている
筈です。勿論私もそうです。もともと作家は個性の強い人が多いのです。
そんな人が思いっきり自己主張をすれば、かなりインパクトのあるものになると思います。
でも、着手を何処に美しく見せるかを前提に自己表現をしなくてはなりません。それが面白い
のです。それが見せどころなのです。
私は、女流作家として、やさしくて 上品な感じのもの 控えめでも着る人の個性を生かせる
もの、そんな着物づくりを目指し心がけています。
着物は着る人にとって、名脇役でなくてはいけないのです。それが私のポリシーなのです。
何だか今回はやけに熱く語っちゃいました。
実は今年四月頃に島根の美術館で個展をしませんか? と言うお話を美術館の方から
いただきました。大変光栄で嬉しいお話なので、早速その美術館へ見学に行ってきました。
山の自然に囲まれた、とても美しい景色の中にある まだ新しい美術館でした。
ここで、加賀友禅の個展か? いえ、近藤京華の個展なんだ! と考えただけでもワクワク
してきました。高鳴る気持ちをおさえながら、どんな個展にするのか後日打ち合わせる約束を
して帰りました。帰りの新幹線の中で、本当は眠りたかったのに、色んな雛形が次々と浮か
んできて、とうとう金沢まで一睡もせずに帰って来ました。
どんな作品つくり、どんな内容にするのか このレターでご報告して行きたいと思っています。
どうぞ、お付き合い下さいませ。