前回書かせて頂いた経緯があって、菜の花から始まった、私の中のノスタルジック
ストーリー、そこに至るまでにも色々な経緯があり、今現在があります。
それは当たり前で、誰でも皆そうですよね。人はそれぞれの子供時代があり、娘時代、
新婚時代、子育て時代、そして、子供達の成長と共に、歳を重ねながら、仕事のことや、
病気のこと、人間関係のことなど、いろいろ経験しながら、それぞれの立場で人生という
ストーリーを、幕が降りるまで演じているような気がします。
何年か経ったある日、「こういう経緯で個展をしたら、こういう事になって、こう
なったんだ。」なんてストーリーを話しているかもしれませんね。
それで考えました。今回の個展のテーマは、『のすたるじっく すとーりー』と称し、
今までの作品の中でも、思い出深いものや、何かの節目に出来たものを中心に、見て
頂こうかと思っています。
例えば、花更紗という柄があります。独立したばかりの頃、問屋から悉皆屋さんを紹介
され、「近藤さんよりずっと先輩だから、色々教わっていいものをつくって下さい。」と
言われました。そして「三年経っても売れない作家は、ずっーと売れないからね。」
とも言われました。私は素直に受け入れ、言われるままに図案を直し、色を変え、
注意を忠実に守るよう心がけて仕事をしていました。
ところが、展示会に出してもなかなか追加注文が取れません。次回こそと頑張っても、
また売れないのです。
気がつくと、三年目に入ろうとしていました。「三年経っても売れない作家は…」という
言葉が頭をよぎりました。どうしよう! 不安と緊張で食欲もなく、頭痛がしてくるのです。
よし! と私は決心しました。
今度、売れなかったらもう辞めよう。この道は諦めて何か違う仕事を探そう。
その代わり、誰にも相談せずに、全部自分で決めよう。図案も、色も、悔いのない様に
全て一人で考えて決め、作業も一人でやろう!と決めたのです。
そして完成したのが、訪問着花更紗です。展示会終了後、すぐに電話があり「近藤さん
売れたよ!二十四枚追加がきたよ。今回の追加でトップ賞だったよ。こんなにいっぱい
つくれる?」と言われ、思わず「はい!頑張ります。やったー。」と叫んでいました。
そして「近藤さんには、アドバイスしない方が良かったかもしれないね。これからは、
自分で考えて、近藤さんらしいものをつくって下さい。」と言われました。
その日の夜は、主人と祝杯をあげました。私の作家活動はここからが、始まりでした。
その時の柄を、今回は色留にアレンジし、年配の方にも合うように、シックな色に
仕上げました。そしてタイトルを『はじまり』としました。
そんな時代がありました。でも、六・七年前からは、問屋自体の売れ行きが悪く、どの
作家も現品が売れれば良い方だと言う状況になってきました。そんな中、去年、十三枚
という、最近では考えられない追加をもらいました。それが、ラベンダーの柄です。
丁度、展示会用の作品にかかろうと思っていた時期に、問屋の得意先である、東京の商社
の方が担当が変わったということで、御挨拶に来られました。とても若々しいさわやかな方
だったので、うちのスタッフ達との間では、さわやかさんと呼んでいました。そして、できた
ラベンダーも、とてもさわやかな感じがすると好評だったので、タイトルを『さわやかさん』
にしました。
こんなふうに、けっこう楽しいノリで、できる柄もあれば、なかなかアイデアが
出ない事もあります。二年位前だったか、何を描いても飽きてしまって、何を描いたら
いいのか解らない時期もありました。
丁度、京都に行く用事があったので、京都のお店を、あちこち見て回りました。けっこう
レトロ調のものが多く、古着をリメイクした様なものが流行っていました。そんな中
琳派の絵画が目に入りました。琳派風に柄を描いたら、面白いかもと思い着きました。
金沢へ帰り早速、琳派風に柄をデザイン化してみました。あの時、京都でぶらぶらして
いなかったら、考えつかなかったかもしれません。今回は、その中の梅を描いています。
琳派梅ですが、タイトルは『京都にて』としました。このレターを読んで頂いている方
だけが、タイトルの意味を知っていると言う訳です。
このレターの冒頭に少しずつ私の中で変化が起きようとしています。と書きました。
初めて私個人として、何もかも手作りの個展にしようとしています。スタッフ達と、折角
だから、何か楽しい企画にしたいと話し合い、着付けの先生に変わった帯の結び方や、
エステ、ネイルアート、ヘアメイク、などプロの方に実演してもらったら楽しいかも、
なんていう話が出て来ました。それで、思いきってそう言う方々に協力してもらえるか、
相談しました。皆さん「面白そうですね。」と快く参加して頂く事になりました。
そして、午前と午後に一時間だけ実演タイムをつくろうと思っています。
それともうひとつ、これも初めての試みなのですが、私がデザイン、プロデュースした
加賀友禅のオリジナルジーンズの試作品も、ご紹介しようと思っています。これもプロの
方に協力して頂き実現出来そうです。